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いなかの猫の天邪鬼部屋

第36話

OnAir~シーズン2・第36話~


#If...終映の日、午前最後の撮影現場

(セットの中で俳優たちが演技する場面、静かな現場)

ギョンミン : (モニターを見てから) カット!OK。お疲れ様でした。

(スタッフたち、忙しく最後の挨拶を交わす。)

オソク : 監督、お疲れ様でした。今回も本当に苦労が多かったでしょう?

ギョンミン : (オソクを見ながら笑う) 苦労は...オソクが、お前の方が多かっただろう?こんなに苦労させられるなら、もう俺とは二度とやりたくないだろう?

オソク : (にっこりと笑う) 何をおっしゃるんですか。...(ギョンミンを見て) 少しは...

ギョンミン : (声を出して笑う。オソクの肩を叩く) 御苦労様。ゆっくり休め。

コーディネーター : 終映パーティーはしないんですか?

オソク : 明日の夕方7時にする事にしたから。皆に伝えておいて。

コーディネーター : (気分が良い) はい!


#夜、ヨンウンの病室

(TVを見ているヨンウン。少し離れた席でTVを見るギョンミン、ヨンウンの反応が気になる。)

(最後の台詞が流れて..)

"もしも ..もしも...こんなにもしもを叫んでも、あなたはどこにもいないのですね。....でも私が数万回のもしもを空に送ればあなたが私の前に現れるのなら...それなら私は...今日も空に叫びます。...これは私の祈りだから.."

(エンディング曲が流れる。エンディングクレジットが上がる。)

ヨンウン : (しばらく考え込む).....(微笑む) "もし..."..."If..."..

ギョンミン : (ヨンウン見る) .... 何を考えてる?

ヨンウン : あの台詞はどういう意味かと思って。....(ギョンミンを見る) あなたは分かる?

ギョンミン : ...成す事が出来なかった願い...切実な願い...そんな意味が込められているんじゃないか?

ヨンウン : (遥かな目つき) そうなのかな...

ギョンミン : ?....そんな願いがあるのか?成す事が出来なかった...

ヨンウン : (ギョンミンを見て穏かに笑う) 私の願いは今私の前にあるじゃないの。これ以上を望むのは悪い女だわ。

ギョンミン : (にっこりと笑う) その可愛い口からそんな言葉が出るのは似合わないな。

ヨンウン : こういう時はこういう言葉が似合うの。

ギョンミン : (立ち上がってヨンウンに近付く。ベッドに腰掛けてヨンウンを見て) もっと望んでもいい...君はもっと望んでもいい女なんだよ...

ヨンウン : あなたの言葉だけ聞くと、本当の私が凄い女だと勘違いするようになるわ。

ギョンミン : (暖かい目) すごい事だよ。 イ・ギョンミンを幸せにさせる唯一の人だから...

ヨンウン : ...(ギョンミンの目を見て) あなたもそうよ...。ソ・ヨンウンにとっての唯一の人....

(ギョンミン、ヨンウンにそっとキス...)


#三日後、ヨンウンの病室

(ベッドの横にセアが立っている。)

ヨンウン : ここまで来るのは...面倒だったでしょう?

セア : 入院なさったという話は聞いていたのですが...かえって御迷惑かと思って来られなかったんです。

ヨンウン : (微笑む) ドラマ見ました。感動的でしたよ。

セア : (息を吸い込んで) 監督のおかげです。とても勉強になりました。

ヨンウン : ........(ためらってから ) あの..最後の台詞...タイトルもそうだけど...どういう意味なのか聞いてもいいですか?

セア : .... この前ソ先生がおっしゃった事です。私に最善を尽くしなさいとおっしゃいました。仕事にも愛にも...それがあの方法だったんです。現実の中で自分の仕事に自分の愛に最善を尽くす...それが...あれです...

ヨンウン : そうだったのね....


#6月のある日、病院分娩室

(ヨンウン、陣痛中。ギョンミン、ヨンウンの手を握ってどうしたらいいか分からない。)

ギョンミン : もう..手術しよう。これ以上見ていられないよ。な?

ヨンウン : (呼吸して) 医者が自然分娩を試みるに値するって.........あああ~~~~~~~~~~~~~~~~~

ギョンミン : 頼むから~~~~~~~~~~~~~気が狂いそうだよ......(泣くような)

(しばらくして赤ん坊の泣き声)

"女の子ですよ"

ギョンミン : (安心する。ぱっと笑う。ヨンウンにキス) やった~~~~~~~~! 女の子だって!君に似た女の子!

ヨンウン : (力無く笑う) 見もしないで、何が似ているって?

看護婦 : お父さん、一度見てください。

ギョンミン : (赤ん坊を受ける) あ......(感激して言葉を引き継ぐ事が出来ない)

ヨンウン : (見て) どう?誰に似てる?

ギョンミン (見る) うん...? .....分からない...赤くて...くちゃくちゃで....でも変な気分だよ...

看護婦 : (笑う) そもそも新生児は皆そうなんです。3日経てば人間らしくなるんです。(赤ん坊を受け取って、抱いて、ヨンウンにしばらく見せてやって) 可愛いでしょう?

ヨンウン : (感激して) すごく可愛い....

ギョンミン : そうか...? 可愛いのか?本当に可愛いんだな?

ヨンウン : (睨む) 可愛いわよ。...(赤ん坊を見て) 唇があなたに似てるじゃないの。...(微笑滲む) ああ可愛い~。

ギョンミン : (微笑滲む) 本当...? どこが..(また見る) ちっちゃいな....(口を閉じられない)

ヨンウン : (ギョンミンの姿に幸せな).....


# 7月、局長室

(会議机にカン局長とヘギョンが座っている。)

カン局長 : それでは...この放送局のPDを貸して欲しいと?

ヘギョン : 実際はそうならないんですけど...。なんでしたら、制作は私たちがして企画はSBCでする事で手を打ってはダメですか?いずれにしろイ・ギョンミン監督のシナリオですし...

カン局長 : そんなに良く書けているのか?

へギョン : (笑う) ええ。監督が書くと、時々そういう事があるんですが...。作家とはまた別の魅力があります。純粋で...

カン局長 : 分かった...(インタホンを押す) イ・ギョンミン。局長だが、ちょっと俺の部屋に来い。

(しばらく後)

(ギョンミン、机の横に立っている。)

カン局長 : ドリームハウスで監督にお前を指名したから、議論して上手くやるように。

ギョンミン : (局長を見る) ...はい。

ヘギョン : イ・ギョンミン監督に時間が出来るまであえて待ったのがお分かりでしょう?よろしくお願いします。

ギョンミン : (口元にありがたい微笑をそっと浮かべる) よろしくお願いします。


#9月、家。

(ヨンウン、赤ん坊を抱いて補乳瓶を温めている。電話に出る。)

ヨンウン : はい..?講義ですか?


#夕方遅く、家

(食卓で一人で食事するギョンミン。向かい側に座ったヨンウン。)

ギョンミン : 講義だって?どこで?

ヨンウン : 女子大の文学部なんだけど...創作実技だとか。

ギョンミン : いつなんだ?

ヨンウン : 一ヶ月後だって。アンケート調査で私が選ばれたのよ。...(笑う) この人気は.....

ギョンミン : (笑う) また、また...

ヨンウン : もう~。事実なのに...(笑う)

ギョンミン : それで...? 主題は何だ?

ヨンウン : 放送文学と実技だそうだけど...一度もした事がないから、悩むわ。

ギョンミン : 講義時間は?

ヨンウン : 2時間の特別講義。

ギョンミン : 2時間なら..ソ・ヨンウンの話術で十分持ち堪えられるな...

ヨンウン : (苦笑) 何言ってるのよ。話術だけで堪えられる?

ギョンミン : (ヨンウンを見ながら笑う) .... 君が文を書く時重要だと思う事をを整理してみろよ。そうすれば何かが出ると思うから。

ヨンウン : (考える) 私が重要だと思う事....

(その時部屋の中から泣き声が聞こえる。)

ギョンミン : (頭を上げる) ウンミンが起きた。

ヨンウン : (ウッ!) 今起きるなんて。どうするのよ..?また夜を明かすのね...(立ち上がって部屋に行く)

ギョンミン : (笑う) 今日は俺が見るよ。君は寝て。

ヨンウン : (部屋の中から) いいわよ~。私がしなくちゃ。仕事を休んでるんだから。あなたはまた仕事に行かないとならないじゃないの。

ギョンミン : 俺が見るってば!


#10月、大学文学館大講義室

(ヨンウン、講壇に立っている。一杯になった席。)

ヨンウン : ここまで。私が準備して来たものはこれが全部です。...時間がちょっと余りましたね。質問を受けましょうか?

(学生たち、手を上げる。)

ヨンウン : (ある学生を指名する) じゃあ、あなた。

学生 1 : 失礼な質問なんですが.. チケット・トゥ・ザ・ムーンを基点に、ソ先生のドラマがちょっと変わったと思うんですが、特別な理由はありますか?

ヨンウン : (にっこりと) そう見えますか?そのとおりです。チケット以前の作品は、いわゆるサンマイですか?(一同笑い) うーん....多分、私の人生を見る目が変わったからだと思います。文には書く人の考えが自然に付いて出るんです。そうではなければ、それは嘘を書くという事だから。嘘は誰も感動させられないという事はお分かりだと思います。私の中に怒りがあれば文の中でも怒りが主要モチーフになるんです。感謝があれば感謝が。そう考えると...今私の中には何があるでしょうか?

(一座、感謝です~ 愛です~ ........イ・ギョンミン監督です~!!..わあと叫ぶ学生たち)

ヨンウン : (頭を下げて笑う) ...誰ですか?今...イ・ギョンミン監督だと叫んだ方...(中ほどで手を上げる学生発見) どうして分かったんですか?

学生 : (手をヒラヒラさせて) 私、イ・ギョンミン監督のファンです~~~

ヨンウン : (笑う) ありがとう。 ...うーん...本当にそうです。こんな話をするのは恥ずかしいんですけど。今私の中にあるのはイ・ギョンミン監督です。

(学生たち、足を踏み鳴らしたり机を叩いたりする。ざわめく講義室)

ヨンウン : (笑顔で見守って、何かを発見) 学ぶ事には終りがないと思います。そういう意味で、人生で良い師匠に出会う事は、本当に大変大きな幸運です。私も大好きな先生にお会いして、今ここにいるんです。(少しの間、何も言わずに見てから)...御紹介してもいいですか?

(一座、はい~~~~~)

ヨンウン : (顔いっぱい微笑滲む) 今、たった今、入って来たんですが...皆さん、後側を見て下さい。東側です。

(学生たち、振り返る。ギョンミン、入口の横に立っていて慌てる。一座、キャー~~~~~~~~~と声を上げる。)

ヨンウン : 私の師匠であると同時に、友達、私の人生である人です。イ・ギョンミン監督!

(悲鳴の声に沸く講義室。ギョンミン、ドアを開けて出ようとする。周りの学生に捕まる。ひとしきり騷動。)

ヨンウン : (大変だ...) イ・ギョンミン監督~、ちょっとだけ出て挨拶して下さい。

(ギョンミン、手でダメだという信号。学生たち、ギョンミンを押して前に送り出す。押されて前に出たギョンミン。)

ギョンミン : (怒ったような顔でヨンウンを睨む).....(学生の方を見てぎこちなく笑う。頭を下げて目礼する)

ヨンウン : (内心ハラハラ。そうでないフリをして) 皆さん、イ・ギョンミン監督の声を聞きたくありませんか?

(聞きたいです~~~~~~~~~~~~~~~~)

ギョンミン : (睨む。手を振って、やむを得ず出る) .....(講壇に上がる) ...(マイクを持つ)...こんにちは..イ・ギョンミンです。

(キャー~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~)

ギョンミン : (うるさそうに頭を回す) ...もういいでしょう..?

(また、キャー~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~)

ヨンウン : (ギョンミンを見てすまなそうに笑う) ...(ごめん~ 口の形だけで) ....

ギョンミン : (ヨンウンの方へ首を回して、許さないぞ~ 口の形だけで)...


#文学館前駐車場

(車に乗るギョンミン。)

ギョンミン : (ため息をつく) 行かなけりゃ良かった...

ヨンウン : (助手席に座っている。笑いを堪える) ..お疲れ様。私、挨拶一つであんなふうに狂奔する人を初めて見たわ。(笑う)

ギョンミン : (睨む) 人を笑い物にして...面白いか?

ヨンウン : 笑い物?あなたの人気は最高だったわよ。

(その時、前からおずおずと近付く女学生。ギョンミンの側の窓に近付く。)

ギョンミン : (怪しげな。窓を下ろす ...何か、話でも?

学生 1: あの...これを..(窓から何かを投げ入れ、後退りする)

ギョンミン : (品物を持つ) 何だ?

ヨンウン : (見て奪い取る) 見せて。(つんとしている。開けてみる。ネクタイピンとメッセージが入っている。キーッ!!!)...何、これ...

ギョンミン : 何だって?(メッセージを見る)

" イ・ギョンミン監督様....本当に辛いです...どうして結婚してしまったのですか?....でも、もしかするとという事があるかもしれないから、待ちます。...お二人、共に白髪になるまで、とは言い切れないと思うから.."

ギョンミン : (呆れて笑う) ........

ヨンウン : (見て、脹れている) これで安心して死ねるわ。あなたの事は若い子たちが見てくれるわよ。ああっ!もう。

ギョンミン : (笑いを堪えて) どうしてあんなふうに突然俺を紹介したんだ?俺は現われてはいけない人物なのに。生まれながらのトラブルメーカーだな、ソ・ヨンウンは(笑う)。

ヨンウン : (しゃくにさわる) こんな事になるとは思わなかったのよ。ただ自慢したかっただけなのに....(泣き面で)..あ~っ!

ギョンミン : (ヨンウンを見て) まったく..いつになったら物心が...(頬にキス)... 付くのかな?行こう。

(外でキャッという声が聞こえる。振り返れば車を取り囲んだ学生たちが大声を出している)

ヨンウン : (学生たちを見る。ギョンミンの顔を回してキス)チュー~~~~~~~ 誰にも渡さないわよ。

ギョンミン : (恥ずかしい。頭を下げて顔をしかめる)....ウ~、俺、生きてられないよ~~~~~~~~~~~~~~~




        - 完 -









(原作出処:sonkhj1116さんのブログ



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